6-3. その他のプラスミド
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1) Tiプラスミド
Tiプラスミド
双子葉植物細胞に感染することのできるアグロバクテリウム(リゾビウム属の土中細菌の一種)がもつプラスミドで、植物のがん組織(クラウンゴール:crown gall)から見つかった
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Tiプラスミド中のT-DNA(Ti: tumor-inducing, Tはtransferred)の両端には植物細胞ゲノムに組み込むためのDNAがあり、内部には植物ホルモン(オーキシンとサイトカイニン)をつくる酵素の遺伝子がある
Tiプラスミドには、T-DNAを植物ゲノムに挿入するために必要な遺伝子であるvir領域(毒性領域、組換えにかかわる複数の遺伝子を含む)がある
植物にプラスミド保有菌が感染すると、結果的にT-DNAが植物ゲノムに挿入され、組織が異常増殖して「がん」となる
このような性質をもつため、Tiプラスミドは植物細胞にDNAを導入するベクターとして利用される
2) 他の細菌プラスミド
プラスミドは病原性細菌(e.g. ブドウ球菌、肺炎球菌)や常在菌(枯草菌や乳酸菌、プラスミドには発酵工業的利用価値がある)を含む他の細菌にも広く見られる
多くは大型の耐性プラスミドで、病原性細菌が薬剤耐性になる現象にはこれらのプラスミドが関与する
院内感染で問題になる多剤耐性菌も、トランスポゾンによる耐性遺伝子の転移(積み重ねを含む)とプラスミドの伝達がかかわっている
3) 出芽酵母のプラスミド
真核細胞である出芽酵母にもプラスミドがある
遺伝子工学で有用なものは2ミクロンDNA(2μmDNA)という6.3kbの環状DNA
プラスミド中のoriとその周辺の安定化領域を含むDNAは、プラスミドベクターの材料になる
出芽酵母にはキラー因子というRNAプラスミドも存在する
キラー因子は細胞を殺すように働く
memo: 動物細胞のプラスミド
動物には天然の安定したプラスミドは知られていない
ただ、環状DNAをもつウシパピローマウイルス(BPV:bovine papillomavirus)DNAは、齧歯類などの非許容細胞中では、長時間プラスミド状で存続することができる